じれったい
玉置常務の電話に出ていたせいで、手紙のことをすっかり忘れていた。

だけど、この手紙には玉置常務のお母さんが危篤だと言うことが書かれている。

こんな大事なことが書いてある手紙を捨てる訳にはいかなくて、封筒と一緒にズボンのポケットの中に入れた。

きた時はエレベーターだったけど、出る時は階段を使って1階へと駆け下りた。

マンションを出ようとした時、
「わっ!?」

「きゃあっ!?」

誰かとぶつかってしまった。

「あっ、すみません!」

私はその人に向かって謝ると、早足でその場を去った。

「あの、君…」

ぶつかったその人が声をかけてきたけれど、最後まで聞いている余裕はなかった。

とにかく今は、玉置常務を待たせてはいけないことで頭がいっぱいだった。
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