じれったい
「どうぞ、おかけになってください」

「あ、はい…」

私が椅子に座ったことを確認すると、玉置さんも向かい側の椅子に腰を下ろした。

「先ほどファックスで履歴書が送られてきたので確認をさせてもらいましたが、3ヶ月前は『松栄ハウジング』の事務職として働いていたそうで」

そう言ってきた玉置さんに、
「はい、そうです」

私は返事をした。

「どうして映画会社に転職をしようと思ったんですか?」

わっ、きたよ…。

本社の方で面接をした時もそうだったけれど…やっぱり、珍しいんだろうな。

どうしてこんな畑違いなところへ…と、面接官は思ってただろうな。

失恋をしたので顔をあわせるのが気まずくて…なんて言える訳がないから、
「20代のうちに、さまざまな経験を積みたいと思ったので転職をしました」

面接の時と同じ答えで返した。
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