じれったい
「――痛ッ…」

私の腕を引いている玉置常務は、知らない人みたいだった。

「和歳、まだ話は終わってないぞ!」

お兄さんに背中を見せると、玉置常務は早足で会社の方へと足を向かわせた。

私はそんな玉置常務にあわせることが精いっぱいで、どうすることもできなかった。

「和歳、待ってくれ!

話を聞いてくれ!

君と話がしたいんだ!」

お兄さんが追いかけてきた。

「僕はあんたと話したくない!

もう帰ってくれ!」

玉置常務は言い返すと、追いかけてきたお兄さんを突き飛ばした。

「うわっ!?」

お兄さんが地面に倒れた。

「た、玉置常務…」

私はお兄さんと玉置常務の顔を交互に見つめたけれど、彼はお兄さんに駆け寄ろうともしなかった。
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