じれったい
12・言葉は暴力
今日の仕事が無事に終わった。

腕時計に視線を向けると、8時30分を過ぎたところだった。

食事会の会場から車で自宅へと向かっているところだった。

「映画、おもしろかったですね」

そう話しかけてきた玉置常務に、
「そうですね、とても感動しました。

時間をテーマにしたラブミステリーの話で少し難しいところがありましたけれど、とてもおもしろいと思いました。

公開を迎えたらまた見に行きたいなと思いました」

私は答えた。

「矢萩さんも僕と同じ映画が好きになりましたね」

嬉しそうに笑いながらそう言った玉置常務に、
「ありがとうございます」

私は言った。

少しだけ…本当に少しだけでいいから、私は玉置常務に近づけているだろうか?

本当を言うと、公開されたら今日みたいにあなたと一緒に見に行きたいです。
< 196 / 273 >

この作品をシェア

pagetop