じれったい
ガシャンッ!

それを見た玉置常務の手からマグカップが滑り落ちた。

私は火を止めると、ふきんを持って玉置常務へと駆け寄った。

「玉置常務、大丈夫ですか?」

私が声をかけたのに、玉置常務の視線はテレビへと向けられたままだった。

私もテレビの画面へ視線を向けると、
「――えっ…?」

そこに表示されていた名前に、自分の目を疑った。

『重傷者 玉置雅志さん』

玉置常務のお兄さん、だよね…?

私は玉置常務の顔に視線を向けた。

彼は青ざめた様子で、テレビに表示されている重傷者の名前を見ていた。

「――僕の、せい…?」

玉置常務が震えた声で呟いた。

「僕がいなくなればいいって言ったから…」

ガタガタと寒さを感じたように、玉置常務の躰が震え出した。
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