じれったい
その名前を聞いた瞬間、後頭部を殴られたような衝撃が襲った。

「彼とは去年からクラスが一緒になったんだけど、とてもいいなって思ってたの。

そしたら、彼もあたしのことが気になっていたみたいで」

どうして美知留は、僕を選んでくれなかったのだろうか?

恥ずかしそうに顔を赤くしながら兄との馴れ初めを話す美知留だけれども、僕の頭の中には一切入ってこなかった。

一緒にいたのは僕だったはずだ。

美知留のことをよく知っているのは僕だ。

誕生日、好きな食べ物、好きな音楽…そして、好きな映画――美知留の何もかもを僕は知っているのに、どうして選んでくれなかったの?

僕は一体、何だったの?

気がついたら、僕は自分の家の自分の部屋にいた。
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