じれったい
いつの間にか、家に帰っていたようだ。

「――何で…?」

僕の口からその言葉が出てきた。

何で…何で、僕を選んでくれなかったの?

一緒にいたのは僕だったはずなのに、どうして美知留は兄を選んだのだろう?

「――何でなんだよ…!」

膝からガクンと崩れ落ちて、顔を隠すように両手でおおった。

いつだって…いつだってそうだ。

兄はいつも僕からいろいろなものを奪って行った。

母の愛情は、全て兄のものだった。

なのに、美知留までも奪ったなんて…。

「――何であいつばかりが僕の欲しかったものを奪うんだよ…!」

泣きながら叫んだ僕の声は、1人ぼっちの部屋に冷たく響いた。
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