じれったい
大学卒業後は祖父と同じ映画技師の仕事を希望していた僕だったが、フィルムを扱っている映画館があまりにもないので映画技師の仕事はあきらめた。

だけどどうしても祖父と同じ映画関係の仕事はしたいので、あちこちの映画会社の面接を受けた。

その甲斐もあり、僕は大手映画会社『鶴東株式会社』での就職が決まった。

大学を卒業してからの5年間は本社の方で働いていたのだが、6年目を迎えた28歳の時に僕に転機が訪れた。

「『ファクトリー』、ですか?」

出社したとたんに人事課に呼ばれたので何事かと思ったら、子会社である『ファクトリー』の異動の話だった。

「玉置くんはおじいさんが映画技師だったと言うこともあってか、とても映画に詳しい。

こんな人材を本社に置いておくのはもったいないと言うことで、『ファクトリー』の社長さんから話がきたんだ」

人事担当の人はそんなことを言った。
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