じれったい
「でも…僕はまだ6年目ですよ?」

何とも重大な話に、僕は戸惑うことしかできなかった。

「大丈夫、玉置くんならできるよ!」

肩をたたかれて言われた僕は、
「じゃあ、頑張ります!」

異動の話に首を縦に振ってうなずいた。

新しい職場での仕事は不安だが、それよりも僕のこれまでの映画の知識が生かせるんだと言うことに期待していた。

その日の夜は行きつけの居酒屋で飲んで、気分よく家路へと帰っていた時だった。

ドン!

「わっ!?」

「きゃっ…!?」

前から走ってきた人とぶつかってしまった。

「ああ、大丈夫でしたか?」

ぶつかってきた当人の顔を覗き込むと、大学生くらいの女の子だった。

彼女は泣いていた。
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