じれったい
子会社『ファクトリー』に異動してから、僕は前よりも働いた。

そのおかげと言うこともあってか、30歳と言う異例の若さで常務と言う役職をもらった。

全てが順風満帆だ。

父も母も、何より1番の邪魔者だった兄もいない。

故郷を出て正解だった。

後はこのまま結婚をして幸せに…と思った矢先に、兄から手紙が届いた。

「どう言うことだよ…」

離れて暮らしている家族には引っ越しのことを伝えなかった。

携帯電話の番号だって、スマートフォンに機種変更したのと同時に変えたのだ。

封筒から手紙を取り出して内容の確認をすると、数年前から母が癌を患って入院と手術を繰り返していると言うことが書いてあった。

そして、僕の住所は興信所に頼んで調べてもらったと言うことも書いてあった。
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