じれったい
「――今さら何だよ…」

父の次は母か。

母が僕に会いたいと兄からの手紙に書いてあったが、絶対にウソに決まってる。

兄からきた手紙をまた僕は破り捨てた。

母が癌になったのは自業自得だ。

彼女は僕のことなんか1度も見てくれなかった。

兄ばかりを見て、兄ばかりに異常なまでの愛情を注いだのだ。

母の手料理も食べたことがない。

授業参観や運動会などの学校行事にも、母はきてくれなかった。

僕は家族とはとっくの昔に縁を切ったと思っている。

家族もそれに納得して、何も言わないで僕が出て行くことを許したのだ。

ようやく手に入れたばかりの安息を邪魔されるのは、もうごめんだ。
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