じれったい
「――母親が過保護で、ひどいくらいに溺愛されていたせいか…俺には、友達が1人もいなかったんだ…。

“マザコン”だの“母の操り人形”だと陰口をたたかれて、腫れものにでもさわるかのような態度で接されて、特別扱いをされて…母親のせいで、俺の周りには誰も人がこなかった…」

私と同じだ。

母が厳しかったせいで友達はおろか、誰も私の周りに人がこなかった。

彼が抱いていた孤独が痛いほど私に伝わった。

「そうだったんですか…」

初めて聞いた事実に、玉置常務は呟くように言った。

「――そんな中で…初めて、俺に話しかけてくれた人がいたんだ…。

それが、菊田美知留だった…。

美知留は誰に対しても優しい人で、1人だった俺に優しく話しかけてくれたんだ…。

俺は美知留のそんな優しい性格にひかれて、彼女を好きになった…」

そこまで話した後、彼は玉置常務の方へと視線を向けた。
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