じれったい
「――和、歳…。

本当に…本当に悪かった…。

お前から母親と、美知留を奪って悪かった…。

いなくなればいいなんて言われても、当然のことだな…。

俺は…和歳にそう思われるくらいのことを、した訳なんだから…」

そう言ったお兄さんに、玉置常務は首を横に振った。

「――何も知らなかった、僕も僕です…。

僕はあなたが抱えていた孤独や受けた傷を知らなかった…。

ただただあなたがうらやましくて、あなたになりたいと思っていた…。

なのに僕は…兄弟なのに、あなたのことを何1つも知らなかった…。

それどころか、何も知ろうとしなかった…」

玉置常務はお兄さんの手を強く握りしめると、またグスグスと泣き出した。
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