じれったい
病院から出ると、
「お兄さんと和解ができてよかったですね」

私は声をかけた。

それに対して、
「ええ、兄の意識が戻ったうえに話ができてよかったです」

玉置常務は答えた。

「僕は絶ち切れましたかね?

矢萩さんが言っていた兄への憧れを絶ち切ることに」

そう言った玉置常務に、
「絶ち切れたと、私は思います」

私は答えた。

「だって…顔がとても生き生きとしていますから」

そう言った私に、
「そうですか」

玉置常務は笑うと、頬に手を当てた。

その笑顔を見つめると、
「次は、お母様ですね」

私は言った。

「ええ、そうですね。

兄のようにできるかどうかはわかりませんが、ちゃんと向きあいます」

玉置常務は宣言するように言った後、前を向いた。
< 253 / 273 >

この作品をシェア

pagetop