じれったい
初めて知った事実に、玉置常務は驚いたと言う顔をした。

「おじいちゃんが…?」

呟くように聞いた玉置常務に、
「あの時は雅志さんを跡継ぎにすることばかり考えていて、彼の言葉に耳を貸そうとしなかった。

“私だって一生懸命頑張ってるのに…!”って、いつも思ってた」

お母さんが答えた。

「おじいちゃん…」

玉置常務が呟いた。

孤独な少年時代を亡くなるまで支えてくれた玉置常務のおじいさんは、彼のことをいつも考えてくれていた。

考えていたから、お母さんに玉置常務が寂しい思いをしていたことを伝えていた。

「――ごめんなさい…」

お母さんが玉置常務に謝った。

「あなたには、本当に申し訳ないことをしてしまったと思ってる…」

「お母さん…」

玉置常務とお母さんの視線が重なった。
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