じれったい
「恨まれるのは仕方がないと思ってる…。

このまま、あなたの顔を見ることがないままで死ぬんだって思ってた…」

呟くようにそう言ったお母さんに、
「死ぬなんて、そんな…!」

玉置常務は首を横に振った。

それに対して、お母さんは目を細めると笑った。

笑ったその顔は、玉置常務にそっくりだった。

お母さんは玉置常務に向かって手を伸ばすと、その手を彼の頬に当てた。

「――お母さん…」

玉置常務はその手をつかむと、そっと重ねた。

「あなたに抱きしめてもらいたかった…」

玉置常務は呟くと、静かに涙を流した。

お母さんは静かに首を縦に振ってうなずくと、彼の頬を伝っている涙を指でぬぐった。
< 263 / 273 >

この作品をシェア

pagetop