じれったい
優しく微笑んでいる玉置常務の顔が目の前にあったので、私は微笑みを返した。

「――もう1人じゃないですね」

そう言った玉置常務に、
「1人じゃないです」

私は答えた。

「莉亜と2人ですね」

「ええ、和歳と2人です」

言い終えると、私たちはクスクスと笑いあった。

抱きしめあっていた躰を離すと、玉置常務が手を差し出してきた。

「一緒に帰りましょうか」

そう言った玉置常務に、
「はい」

私は首を縦に振ってうなずくと、玉置常務と手を繋いだ。

背後から照らしている夕日が私たちの影を長く伸ばしていた。

その影を見ながら、私たちは歩き出した。

☆★END☆★
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