じれったい
「こっちですよ」

渋い声を頼りに視線を向けると、1人の中年男が私の目の前に座っていた。

緑色の着物に同じ色の頭巾を頭にかぶっているところを見ると…占い師、いわゆる易者と言う職業の人だと言うことがわかった。

若菜に視線を向けると、彼女はまだ電話の最中だった。

少しくらいだったらいいかな。

私は心の中で呟くと、易者に歩み寄った。

「あの…占ってもらっても、いいですか?」

そう聞いた私に、
「よいですよ。

さあ、左手を見せてください」

易者は虫眼鏡を手に持つと、私に言った。

へえ、手相で判断するのか。

箸みたいなものをジャラシャラと動かして占うのかと思ってた。

易者の前に左手を差し出すと、
「どれ…」

易者は虫眼鏡を使って、私の手のひらを覗き込んできた。

ううっ、何だか緊張してきた…。
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