じれったい
母はとても厳しい性格で、私が世間に出ても恥ずかしくないようにと躾けられていた。

箸の持ち方はもちろんのこと、箸の上げ下げまでも厳しく言われた。

私はそれが当たり前だと思っていたから、母の言うことに大人しく従っていた。

父がいないことと母の厳しい性格に疑問を抱き始めたのは、小学校にあがってからのことだった。

クラスの男の子とささいなことでケンカをして腕に擦り傷を作って帰ってきた私を見て、母はすぐさま学校に私を連れて行くと担任を呼び出した。

申し訳ないと言うようにペコペコと頭を下げている担任に母が文句を言っていた様子は、今でも覚えている。

「今後娘にこのようなことがあったら、教育委員会に訴えますからね!」

母は吐き捨てるように担任に言うと、私を連れて学校から去ったのだった。

腕を擦りむいただけなのに、どうして学校に抗議をする必要があったのだろう?

その翌日から、私に対する周囲の態度が変わったことに気づいた。
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