じれったい
「んんっ?」

易者がうなるような声をあげた。

「あの、何か…?」

そう問いかけた私に、
「近いうちに、あなたにチャンスが訪れます」

易者が答えた。

「チャンス、ですか?」

「人生の中で1番大きなチャンスです。

このチャンスを逃してしまった場合、あなたは1人寂しく生涯を終えなければいけません」

「そ、そうなんですか?」

「あなたに訪れるチャンスはあなたに幸運を与えてくれます。

間違っても、このチャンスを逃してはいけませんぞ」

易者が虫眼鏡から顔をあげた時、
「莉亜、何してるのー?」

若菜の声が聞こえた。

「えっ、ああ…」

視線を向けると、電話を終えた若菜が私の目の前にいた。

「これ以上遅くならないうちに早く帰るわよ」

「ああ、うん」

そうだ、お金を払わなきゃ。

そう思って易者の方に視線を向けたら、
「…あれ?」

私の目の前にいたはずのその人はいなかった。
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