じれったい
玉置常務は純粋に映画の話をしたいだけだよ。

そもそも、紳士な彼の性格に下心があるとは思いたくないよ。

そんなことを思っているから、“重い”とか“束縛が激しそう”だとか何とかって言われるんだよ。

「――今日は、ごめんなさい…」

私は首を横に振って断った。

「明日また、映画のことを聞かせてください。

今日はもう疲れてしまったので…」

呟くようにそう言った私に、
「そうですか…。

では、今日はゆっくりとお休みください」

玉置常務が言った。

「失礼します」

そう言ってその場から立ち去ろうとした時、
「待って」

玉置常務に腕をつかまれたかと思ったら、
「――ッ…!?」

一瞬、何が起こったのか全くわからなかった。
< 97 / 273 >

この作品をシェア

pagetop