ヒーロー委員会
「憧れの人がいるんだよ……」


「あぁ、前に言ってたお前だけのヒーロー」



俺が呟いた言葉に旭は思い出したように(あと少し馬鹿にしたように)小さく笑った。


俺は幼稚園児のころ、ヒーローに会ったのだ。


確かに、身長だってさほど高くもなくて、なんだかよくわからないマスクをしていたし、よくよく考えてみれば変質者みたいだったかもしれないけど。


だけど、彼は正真正銘のヒーローだったのだ。


それとよく覚えていたのは、ヒーローが着ていたのはぴっちりしたスーツではなくて東城高校のジャージだったこと。



「絶対、変質者じゃん。それにたかが、野良犬から助けてもらったくらい……」


「ば…っ!お前だってあの時、俺を置いて逃げ出したじゃねーか!」


「俺の犬嫌い、知ってるだろ!?」


いつの間にか言い合いはヒートアップしていて、ついにはおばさんに静かにしなさい、と怒られてしまった。


俺たちだけしかいないから良いじゃん。


仕方なく図書館を出て、旭の家で勉強をし直すことにした。


図書館を出るとむわっとした外の暑い空気が肌にまとわりついてきて、ベタベタする。


外はまだまだ蝉はうるさいくらい鳴いていて、西に沈んでいく太陽の光が眩しかった。


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