僕と死神とその煌きを
仕方がなく、僕はぐっと身体に力を込めて、起き上がる。
すると、不思議な事にすっと上半身をベッドから浮き上がらせることが出来た。
それどころか、先ほどまでの苦しさやだるさが、全く無くなっていた。
「……え?」
「肉体と魂が分離したんだ。どうだい?気分が今までにないくらい、いいだろう?」
「う、うん。こんなに楽なのは初めてじゃないかと思うくらいだ」
「さあ、僕の手を取って。行くよ」
ネルロは僕の前に手を差し出した。
その手を取ると、ふわっと身体が空中に浮き、そのまま物凄い速さで建物をすり抜け上昇していく。
「うわ……!」
「どうだい?久しぶりの外は。気持ちいいだろう?」
「う、うん!なんてきれいなんだろう!」
僕の足元には街の明かりが、まるで宝石のようにキラキラと輝いている。
鳥のように、僕はネルロに手を引かれ空を飛んでいた。
肉体と魂が分かれた時、全ての感覚が失われるのだと思っていたけど、決してそんなことはなく。
――ああ、なんて素晴らしいんだ。
苦しみから解放された身体。
嫌というほどに感じられる、すがすがしいほどの空気。
何もなく生きていたら気にならない些細なことが、今の僕には涙が出るくらい嬉しい。