3.5センチメートルの境界線
思い出よ
同じテニス部の2人は夏休みに入っても毎日顔を合わせていた。
「よー、絵理さん」
「相変わらずだらだらしてんね、あんたは」
転がったボールを拾う絵理の横をのんびりとついてくる俊太。
「ちょっと、なんでついてくるのよ」
「えーだって暇なんだもーん、暑いし」
「暇って…怒られても知らないよ」
夏の強い日差しはさんさんと降り注ぎ、絵理達を包んでいる。
「ほらほら絵理君!早くボール拾わないと怒られるわよ!!」
「こいつうざ」
茶々を入れる俊太を横目に忙しい絵理。
日常にこの光景が入ってきたのは今年の4月、部活は一緒だったが2人はあまり話さない仲だった。
しかし、クラスが一緒になって、席替えのたびに隣の席になり、話す機会が出来てからは急激に仲良くなっていった。
並んで歩く2人に茶々を入れる後輩や同級生。あまり絵理はそれを気にしていなかったが、その光景に悪い気はしていなかった。
…そして、この日々の終わりを、ぼんやりと思い浮かべていた。