3.5センチメートルの境界線
「っ!?」
その声を聞いて、とっさに扉を開ける。
…だがそこには誰も居なかった。
急いで1階にも降りるが、物音1つしない。
なんだったのか、
聞き覚えのある声。
なんども何度もその声を聞いて、笑顔になった。
裸足のまま玄関の外に出て、あたりを見回す。
違う、
聞き覚えのあるとか、もうそういうレベルじゃない。
…大好きな声。
「…っ……俊太っ!!どこにいるのよ!」
ずるい、ずるい
寂しい思いさせて、急に現れて、隠れるなんて
その場に崩れ落ちてボロボロと涙をこぼす。
いっそ雨が降って欲しかったが、空はそんな兆しもなく青く澄み渡っていた。
何もかもが綺麗な、美しい景色だった。