男装少女争・奪・戦 ~誰か選ぶとか無理だから!~ 【完】
「ほら、帰るぞ」
差し出された手がうれしくて、けれど手を伸ばすことはできなかった。
「ダメ……行けない」
「はぁ? ……お前何言ってんだよ」
訝しげな顔をするが俺の意見は変わらない。
「行っちゃいけないんだ、会長と約束……したから。祐一郎を助ける代わりに婚約するって……だから行けないんだ」
行けない、その強い意志を込めた目で祐一郎を見る。
「行ったら、祐一郎がまた危険になる。
俺は祐一郎が幸せなら何でもいい……これで、正解なんだ」
「ッ……お前は俺のこと何もわかってねぇのな」
「わかってるよ! 幼なじみで、ずっと一緒にいて、わかってるからこそ祐一郎が幸せに……」
「……何もわかってねぇだろ!
俺がこれで幸せだと思ってんのか。俺が、お前がいねぇ状況で……それが幸せだって本気で言ってんのかよ!」
「だって……だって……」
言葉が見つからなかった。
祐一郎の言っていることは事実だったから。
俺はただ、俺が脳内で作り上げた『祐一郎』が幸せになれる道を選んだだけだった。
俺は勝手に思い込んで、これで祐一郎が幸せなんだと、勘違いしていただけだったから。
誕生日も、癖も、好物も。知っていたって相手の考えてることは何一つわかっていなかったんだ。
差し出された手がうれしくて、けれど手を伸ばすことはできなかった。
「ダメ……行けない」
「はぁ? ……お前何言ってんだよ」
訝しげな顔をするが俺の意見は変わらない。
「行っちゃいけないんだ、会長と約束……したから。祐一郎を助ける代わりに婚約するって……だから行けないんだ」
行けない、その強い意志を込めた目で祐一郎を見る。
「行ったら、祐一郎がまた危険になる。
俺は祐一郎が幸せなら何でもいい……これで、正解なんだ」
「ッ……お前は俺のこと何もわかってねぇのな」
「わかってるよ! 幼なじみで、ずっと一緒にいて、わかってるからこそ祐一郎が幸せに……」
「……何もわかってねぇだろ!
俺がこれで幸せだと思ってんのか。俺が、お前がいねぇ状況で……それが幸せだって本気で言ってんのかよ!」
「だって……だって……」
言葉が見つからなかった。
祐一郎の言っていることは事実だったから。
俺はただ、俺が脳内で作り上げた『祐一郎』が幸せになれる道を選んだだけだった。
俺は勝手に思い込んで、これで祐一郎が幸せなんだと、勘違いしていただけだったから。
誕生日も、癖も、好物も。知っていたって相手の考えてることは何一つわかっていなかったんだ。