男装少女争・奪・戦 ~誰か選ぶとか無理だから!~ 【完】
だけど、会長にあのあと聞いた話。

祐一郎の存在が邪魔だと考える人間は意外と多いらしくて。



祐一郎のおじいちゃんが今の浅谷家をまとめてて、それを継ぐのは祐一郎だって決めているらしいんだ。

他の人間は認めないって。

祐一郎には兄弟がいなくて、祐一郎のお父さんも婿養子。

だから直系の子は祐一郎だけってことになるからって。

けれどそれはやっぱり他の親戚には良いことじゃない。



そして西園寺家は、祐一郎の家が持ってるテレビ局との繋がりが欲しいらしい。

繋がりっていうとそこまで大きなこととは思えないけど、その実、西園寺家に下ることとも言える。

だから祐一郎のおじいちゃんは断固として拒否してて……


その人たちが今回手を組んで、祐一郎が目をつけている『俺』を使って脅そうとしたらしい。祐一郎が俺を突き飛ばしたから結局計画は変わったらしいけど。



次には、祐一郎を助けられるとは限らない。

ここで祐一郎の手をとったならば、きっと会長も次は助けてくれない。



「ねぇ、祐一郎。ごめん……俺のワガママ、一つだけきいて」



俺の決断は、これだ。

「祐一郎が危険な目にあうかもしれない。それはわかってる。

 でもね……俺は祐一郎と一緒にいたい。
 ……俺のワガママ、きいてくれる?」

祐一郎は俺が今手をとらなければ安全に暮らせるかもしれない。

でも俺は、祐一郎のそばにいたい。

これは俺の、とても大きなワガママ。
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