男装少女争・奪・戦 ~誰か選ぶとか無理だから!~ 【完】
エピローグ
「ヤバいヤバいヤバい、ぜっったい俺殺される」
二年と少しの時が過ぎ、俺達は白羽学園を無事卒業した。
何ごともなかったと言えば嘘になるけれどそこまで大きな事件はなく、比較的安全に学校生活を過ごせたと言える。
が、しかし今現在俺は最大のピンチに面していた。
学園を卒業したということは当然寮も出ることになる。けれど恐ろしいのが母さんのこと。
会長と婚約するってことにはすごく喜んでいた母さん。にもかかわらず俺は祐一郎を選んでしまった。
母さんの怒りは想像するとおりだろう。
「大丈夫だっての。そもそも怒ってりゃ連れ戻しに来るだろ」
「でも俺の顔も見たくないってことだったらどうするのさ」
玄関の前まで来ても押し問答を続ける祐一郎と俺。
祐一郎は俺を説得するがそう簡単に心の準備ができるほど俺は大人じゃないのである。
「絶対入らない入れな……ああっ」
俺の反論も無視してインターホンを押してしまった祐一郎に俺は悲鳴をあげる。
「そう騒ぐなって……こんにちは、お久しぶりです」
途中からはインターホンの向こうと話し始めている祐一郎。
俺は死刑宣告を待つ囚人のような気分で祐一郎の影に隠れていた。
カチャリとドアが開く。
と同時にパアンという爆発音。咄嗟に手で頭をかばった俺。
だが手の甲にひらりとテープのようなものがかかったのに驚き目を開ける。
そして驚き開けた目を丸くした。
そこにはクラッカーを持った母さんが立っていたのだ。
「うそっ、なんで!?」
俺が驚いているのなど微塵も気にせず母さんは「お帰りなさい」とご機嫌だ。
「長期休みにも全然帰ってこないなんてひどいじゃない」
と少々不満をぶつけてきたが怒っている素振りはない。
「あの、母さん。怒ってないの?」
恐る恐る聞くと、なぜ? と返された。
「だって俺、かいちょ……西園寺家とのやつ断って祐一郎のこと、その……選んじゃったし……」
「それでなぜ私が怒るのよ」
頭にクエスチョンマークを浮かべる母さん。
「母さん、喜んでたでしょ? だから……」
その言葉で母さんが納得したように頷く。
「あなたが何を勘違いしているのかはなんとなくわかるけれど、私が喜んだのは"あなたが良縁を見つけた"のが嬉しかったからよ?
もちろん断ったことは相手側には悪いとは思うし相手側が腹を立てていてもおかしくはないわね。
でもね、私はあなたが選んだ相手ならいいのよ。だって私は『親』だもの」
母さんは口元に微笑を浮かべた。それはとても優しくて「ありがとう」とほぼ無意識に口に出していた。
「さ、中に入っちゃいなさい。卒業祝いもあるのよ」
「う、うん!」
俺は祐一郎の方を見て笑い、彼の手を引く。
そうして俺は再度、誰に向かって言うではなく「ありがとう」と呟いた。
二年と少しの時が過ぎ、俺達は白羽学園を無事卒業した。
何ごともなかったと言えば嘘になるけれどそこまで大きな事件はなく、比較的安全に学校生活を過ごせたと言える。
が、しかし今現在俺は最大のピンチに面していた。
学園を卒業したということは当然寮も出ることになる。けれど恐ろしいのが母さんのこと。
会長と婚約するってことにはすごく喜んでいた母さん。にもかかわらず俺は祐一郎を選んでしまった。
母さんの怒りは想像するとおりだろう。
「大丈夫だっての。そもそも怒ってりゃ連れ戻しに来るだろ」
「でも俺の顔も見たくないってことだったらどうするのさ」
玄関の前まで来ても押し問答を続ける祐一郎と俺。
祐一郎は俺を説得するがそう簡単に心の準備ができるほど俺は大人じゃないのである。
「絶対入らない入れな……ああっ」
俺の反論も無視してインターホンを押してしまった祐一郎に俺は悲鳴をあげる。
「そう騒ぐなって……こんにちは、お久しぶりです」
途中からはインターホンの向こうと話し始めている祐一郎。
俺は死刑宣告を待つ囚人のような気分で祐一郎の影に隠れていた。
カチャリとドアが開く。
と同時にパアンという爆発音。咄嗟に手で頭をかばった俺。
だが手の甲にひらりとテープのようなものがかかったのに驚き目を開ける。
そして驚き開けた目を丸くした。
そこにはクラッカーを持った母さんが立っていたのだ。
「うそっ、なんで!?」
俺が驚いているのなど微塵も気にせず母さんは「お帰りなさい」とご機嫌だ。
「長期休みにも全然帰ってこないなんてひどいじゃない」
と少々不満をぶつけてきたが怒っている素振りはない。
「あの、母さん。怒ってないの?」
恐る恐る聞くと、なぜ? と返された。
「だって俺、かいちょ……西園寺家とのやつ断って祐一郎のこと、その……選んじゃったし……」
「それでなぜ私が怒るのよ」
頭にクエスチョンマークを浮かべる母さん。
「母さん、喜んでたでしょ? だから……」
その言葉で母さんが納得したように頷く。
「あなたが何を勘違いしているのかはなんとなくわかるけれど、私が喜んだのは"あなたが良縁を見つけた"のが嬉しかったからよ?
もちろん断ったことは相手側には悪いとは思うし相手側が腹を立てていてもおかしくはないわね。
でもね、私はあなたが選んだ相手ならいいのよ。だって私は『親』だもの」
母さんは口元に微笑を浮かべた。それはとても優しくて「ありがとう」とほぼ無意識に口に出していた。
「さ、中に入っちゃいなさい。卒業祝いもあるのよ」
「う、うん!」
俺は祐一郎の方を見て笑い、彼の手を引く。
そうして俺は再度、誰に向かって言うではなく「ありがとう」と呟いた。