國比呂少年怪異譚
「むねん。むねん。むねん。むねん。むねん。むねん。むねん」

男は、はっきりと繰り返していたという。

総毛立つ様な思いがしたそうだ。

また顔は相変わらずニタニタと笑っているが、何故か激怒しているように見えた、という。

叔父達は急に恐ろしくなり、襖をそっと閉め隣の間で一心にお経を唱えたそうだ。

するといきなりバシッ、と襖が開き、男が、

「有り難うございました。今日はもう帰らせて頂きます」

そう言うと、こちらの返事も聞かずにそそくさと帰っていった。

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