國比呂少年怪異譚
査察
税務署の職員だったという方が、僕の所に相談に来た事がある。

90年代の頃だが、田園調布の、ある家へ査察に入ったらしい。

すると、玄関で奥さんが数珠をじゃらじゃらさせつつ、

「悪霊退散、悪霊退散、悪霊退散」

とひたすら呟いている。

この家がある神道系カルト新興宗教に帰依しているのは調査で知っていたが、流石に面食らったし不愉快だったという。

税務署員には珍しく短気な同僚は、

「随分と奥さんは不機嫌ですね」

等と皮肉を言った。

家の主人も鼻で笑い、人を食った様な事を言う。

「家内が言うには、どうも本日来る客人が、災いを運ぶとの夢を見たらしくてね」

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