國比呂少年怪異譚
上司に調査が失敗だった事を電話で連絡すると、上司から怒鳴り声が返ってきた。

『馬鹿野郎、だからお前は詰めが甘いんだよ。待ってろ、今から俺が行く』

しばらくして上司が来た。

上司は神棚にどすどすと直行して箱を平然と開け、箱に手を突っ込み探り出す。

よく手が突っ込めるなと驚いていたら、上司がニヤリと笑った。

「見ろ、箱は二重底だ」

二重底の箱からは、脱税の証拠である裏帳簿が見つかった。

主人と奥さんの顔が見る見る真っ青になる。

上司は調査後に言った。

「真に怖いのは霊や呪いじゃない。人間の欲望と悪意だよ。人間は金の為なら嘘も付くし演技だって平然とする。今回の調査を見ろ。神棚に隠す狡さ、“呪い”に対する人間の恐怖を利用した巧妙な手口、真に怖いのは人間の欲望と悪意だ」











それから1年以内に、箱を触った同僚が自殺し、上司が交通事故で死亡したという。

2人が死んだのは偶然なのか。

本当に、真に怖いのは、人間の欲望と悪意だけなのだろうか…。











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