恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
6.オフィスラブ
金曜日。
今日は午前中内勤。
会社で朝の仕事がひと段落してから、休憩室に向かう。
誰もいない部屋でコーヒーを飲んでいると、圭太郎がやってきた。
タンブラーに珍しくコーヒーを淹れている。寝不足なのかな?
圭太郎は会社では黒縁眼鏡をかけている。地味男の演出アイテムらしいけど、眼鏡姿もなかなか萌える、なんてことは絶対本人に言えない。
今週は外に出ていることが多かったから、ちゃんと顔を合わせるのは月曜日以来。
いまだに内心ドキドキするって、重症よね。
「マリがT国際指揮者コンクールの2次予選通って本選に進むって、龍之介情報」
圭太郎が同じテーブルのはす向かいに座ってきて、言った。
早瀬マリさん。
高校までヴァイオリンを弾いていて、圭太郎とはコンクール仲間だった。
現在は指揮者。圭太郎の市民オケも指揮したことがある。
設楽龍之介さん。
圭太郎のヴァイオリンの兄弟子かつ先生。現在音大講師。
「知ってる。ご本人からゆうべメールで報告もらったから」
そう言うと、圭太郎は微妙に嫌そうな顔をした。
いや。そんな顔されても。マリさんとは お友達になりましたから。