恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
ヴァイオリニストの独り言
僕は毎朝、両親の仏壇の前で手を合わせる。
元気に目覚められたことに感謝し、いろんな話をする。
今日は報告があるんだ。
前に紹介した、僕の奥さんになる人が、今日、引越してきます。
まだ結婚してないけど、我慢できなくて、一緒に住んでもらうんだ。
大丈夫。彼女の親御さんには許可をもらったって言っただろ?
わかってる。ご近所にもちゃんと挨拶に行くって。
彼女は、かっこよくて、潔くて、度胸がいい人です。
でも、ロマンチストで、たまに天然なところもあるんだ。
最近ようやく弱いところも見せられるようになった。
すると彼女はしっかり受け止めてくれるんだ。
できた女性です。
ん? しっかり捕まえときなさいって?
もちろん。そこは抜かりない。
彼女のツボはね、僕のヴァイオリンなんだ。
パガニーニのカプリース24番は、龍之介に女性を落とすために弾けるようになっとけって言われて、散々練習させられた曲。
それが聴きたいっていうんだから、飛んで火に入る夏の虫?
改めて。
ヴァイオリン習わせてくれて、
楽器買ってくれて、
ありがとう。
生涯孤独に耐えるために楽器を弾いていくものだと思ってたけど、誰かのために弾いていきたいと思うのは、とても幸せなことだと感じてる。
よし。
じゃ、時間まで、がっつり練習してきます。