恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
2.理由I
「圭太郎は、何でそんなに、私に指輪してほしいの?」
布団に入って、寝る前、というか……、する前の、腕枕をされてのおしゃべりタイム。
ヴァイオリニストの腕枕なんてとんでもないと私が反対しても、少しの間なら大丈夫、と引かない圭太郎に、私が折れる形となっている。
「あのー、普通、女性は欲しがるものじゃないの? 僕が言うのも何だけど、プロポーズに婚約指輪はマストアイテムなのでは? 綾乃ってロマンチストなのに、妙なところで現実的だよね」
「……普通じゃなくてすみませんね。ほんと、私のどこがいいのよ?」
未だによくわからない。
前に、一目惚れした、みたいなニュアンスのことを言われたことはあるけれど。
「全部だけど、強いて言うなら、かっこよさかな。僕、最初に綾乃を抱いた時、惚れ直したんだよね」
……?
「自分から脱ぐ潔さと大胆さに、もー、この子しかいないと思った」
‼︎
あれかっ‼︎
「恥ずかしいからやめてっ! あれはそもそも圭太郎がいきなり襲ってきたのがいけなかったんじゃない!」
圭太郎の家で、彼が大学四年生の時に弾いたチャイコに落とされた後、告白されて、キスされて、あろうことか、ものすごく嬉しそうな顔をしてその先まで及ぼうとする用意周到な腹黒い男に、降参したんだった。