君のその小さな背中が 【その背中、抱きしめて】番外編SS
「おー、やっぱここだったか」
聞きなれたデカい声が体育館に響いた。
「捗ってるか、左打ち」
「うるせーよ」
どうせからかいに来たんだろ、大地。
「たいして練習なんかしなくても何でもこなせちゃう翔が、こんだけ陰で努力してるとか信じらんないけどな」
「何しに来たんだよ」
大地が上着を脱いで肩をグルグル回す。
「付き合ってやるよ、練習。壁相手よりマシだろ」
そう言って、転がったボールを手に取った。
「形になってんじゃん」
対人パスをしながら大地が意外そうに笑う。
「まだ軽く打つ程度しかできねぇよ」
まだこの程度。
完璧に打てるようになるまでには、まだまだ練習量も時間も必要だ。
「俺、左打ちに変えるとか絶対できねーと思ったけど、翔ならもしかしたらもしかするかもなー」
やるよ、絶対。
絶対夏には左打ちで全国行ってやる。