君のその小さな背中が 【その背中、抱きしめて】番外編SS
「翔先輩!メダル見せてください!」
「メダル首に掛けてもいいですか!?」
優勝メダルをせがまれて、後輩たちに渡す。
「翔、モッテモテだなぁ…野郎に」
1.2年に囲まれてる俺を見て、大地が茶化してくる。
「野郎しかいないだろうが」
「そうでもないぜー?」
大地が指さした方を見ると、自分の学校の応援に来たらしい私服の女子たちが一斉に高い声で騒いだ。
「キャーッ!!カッコイイ!まじイケメン!!」
「こっち向いた!!」
「握手してほしい!!!」
ギョッとしてる俺の前にマネージャーの内村が両手を広げて立ちふさがった。
「翔先輩に近寄らないで!!」
隣で″ぶはっ″と大地が盛大に吹き出す。
「イケメンは大変だなぁ、おい」
「…全然そう思ってねーだろ」
(面白がってんだけじゃねーか)
ひとしきりゲラゲラ笑った後、大地は噛みしめるように
「その左で優勝できて良かったな」
って呟いた。
「あぁ」
それしか俺は言えなかったけど、大地には感謝してる。
冬の初めからずっと練習に付き合ってくれてたからな。
一也や慎一に余計なこと言ったりムカつくこともあったけど。
「大地」
「うん?」
「ありがとな、ずっと」
その返事はない代わりに
笑った大地の目が涙で揺れたのを
見ないふりした。