反対言葉。
とりあえず量がある中では一番安い醤油ラーメンを食べて、腹を満たす。


……ああ、それにしても疲れた。


一旦落ち着きたくて、ラーメンを片付けてまたも陣取る。


スマホをいじる俺に誰かが近づいてきているのは分かっていたが、面倒くさいので顔を上げなかった。


多分あれだろ、あれ。空いてる席に座りたいってことだろ。


「あのー……」


頑なに振り向かない俺に、不穏な呼びかけが、ひとつ。


「…………」

「あのー……」

「……なにか」


沈黙を決め込んだのに、何度も声をかけてくる。


仕方なく不機嫌を隠さずに顔を上げた先には、真っ黒な制服をかっちり着こなした、真面目そうな、どこかあどけない感じがいまだ残る女子が一人いた。


中学生、ではないだろうから、高校生か。


「あの、教えていただきたいことがあるのですが」

「……私は一般生徒ですのでおそらく分かりかねます。学生相談室や総合案内所に行ってもらえますか。申し訳ありませんが」


そう、強引かつ邪険かつ不機嫌かつ、はっきりきっぱり断ったのに、ぽわぽわ抜けていそうな感じの顔をしているくせしてまったく隙がない。


「え、でも」


黒髪ストレートの髪を結わずに流したそいつは、抜け目なく俺の右腕を指して、困ったように笑った。


「それ、係の人のですよね?」
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