反対言葉。
は? なんで腕章なんか。


……もしかして俺、蛍光青の上着と名札だけ脱ぎ捨てて、腕章外してなかったのか。


そうだ。そうに違いない。というかそれしかない。


……なんて、なんて馬鹿みたいなこと。


「……チッ」

「(うわ、舌打ちしたよこの人!?)」


思わず舌打ちがもれる。


馬鹿みたいなことをしでかした自分と、それから――馬鹿みたいな、目の前の女子高生に。


一瞬顔を引きつらせたものの、強情に避けようとはしないそいつへ、俺はあごをしゃくった。


「座れば?」

「え、あの」

「早くしろ。話くらいは聞いてやる」


本当は仕事が終わっているのだから、なにも良心を発揮して時間外労働なんかしなくてもいいのだが、あいにくとそういう気分にはなれなかった。


ああ、本当に、これじゃあ本当の本当にただのボランティアだ。


立ち話でもよかったのに向かいに座れと示したのは、肩にかけた鞄から覗く、なにやら提出するらしきレポート用紙と、その足元のせい。


……足、痛めてるんじゃんか。
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