反対言葉。
使い込まれてところどころすり減っているから、履きなれた靴を履いているのに違いない。


それでも足をどこかかばって変な重心のかけ方になっているのは、長時間立ち続けてどうしようもなくなったってことだろ。


……総合案内所は混んでいる。


おそらく、並んでいてもらちが明かなかったんだろう。それでこんなになるまで放置したと。


レポートは絶対提出しろとでも言い含められてるんだろうな。


もしかすると、大学の人にインタビューしよう! なんてめんどくささの極みみたいな項目があるのかもしれない。俺の学校もそうだった。


提出しなかったら説教、プラスその学校について調べて提出し直しだったから、あまりに面倒くさくて、仕方なく適当に全項目埋めた記憶がある。


オープンキャンパスのレポートなんて、どこの学校も似たようなものだ。


ただの推測でしかないが、おそらく、こいつは足を痛めて、それでも粘って頑張って並んで、レポート用紙に記入しなければいけない事項を聞こうとして。


あまりの混みようにずっと立って並んでいるのは無理だと判断したものの、クソ真面目なことに、レポートをちゃんと提出しようと、それならばあとでまた行こうと決めて、一旦ひと休みしに、このカフェテリアに来て。


きっとそうして俺を見つけたのだ。


腕に総合案内所係員の腕章をつけたままの、俺を。
< 8 / 29 >

この作品をシェア

pagetop