四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
ジルコーは人狼の癖に魔術や魔道の知識にも詳しくて、何だか私よりも頼もしい存在でした。

こんな人に仮にも勝てたなんて、今更ながら嘘みたいです。

「お嬢ちゃん、さっき猟奇殺人が何とかって言ってたよな」

ジルコーが月を眺めながら言います。

「まだその犯人とやらを探すつもりなのか?」

「勿論です」

私は頷きました。

ジルコーが犯人でなかった以上、真犯人は他にいる筈です。

この御影市のどこかに潜み、また犠牲者を出すつもりです。

だったら、真犯人を見つけるまで、私は諦める訳にはいきません。

「じゃあどうだ、ギブ&テイクといかねぇか」

突然。

ジルコーはそんな事を言い始めました。

「俺もお嬢ちゃんの犯人捜し、手伝ってやる。代わりにお嬢ちゃんも俺になんかくれ」

「え?」

そんな事言われても、困ります。

「食べられてあげる訳には、いきません…」

「じゃあ指一本だけくれよ」

「駄目です」

「耳かたっぽだけ」

「駄目ですってば」

「さっきお嬢ちゃんの髪の毛ちょっとだけ食っただろ?すげぇ俺好みの味なんだよ、なぁ頼むよ」

「……」

ジルコーは困った事ばかり言います。

「じゃあ…そのうち髪を切りにいこうと思ってたから…その髪あげます。それでいいですか?」

「OK、成立だ」

ジルコーはニッと笑みを浮かべました。

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