四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
ググッと勢いをつけるような姿勢になった後。

「っっっ!」

弾丸のような勢いで、ジルコーは走り始めました。

狼に乗った女の子が街中を走る。

こんな姿、目撃されたら大騒ぎです。

でも。

「よっと」

軽やかに。

ジルコーはひと跳びで建物の屋根へと飛び上がりました。

後は屋根伝いに。

人目に触れる事なく、彼は夜の街を駆けていきます。

冬の冷たい風が私の頬を撫でて。

でもそれが気にならないほど、不思議な気分でした。

屋根伝いにジルコーが走るせいでしょうか。

まるで夜空を飛んでいるみたいです。

手を伸ばせば、星も、三日月も、届きそうなくらい。

相当なスピードで走っている筈なのに。

恐怖は感じませんでした。

ジルコーが私に気を使ってくれているのかな…。

彼の背中で、何となくそんな事を思っていました。

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