四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
背中を貫くような殺意の視線を振りほどいて、私は振り向きました。

…思ったとおり、茂みの中に何かがいました。

既に枯れ果て、茶色く変色した草むらの中に、飢えた獣臭が漂っているんです。

生臭いような、何ともいえない匂い。

明らかに人間とは違う生き物の匂いでした。

それでいて、野犬や野良猫とは違う気配。

動物園で、鉄の檻を挟んでトラやライオンと対峙した時の感覚に似ていました。

伝わってくる圧倒的な力量差。

少しでも動けば始まる。

…始まるのは戦いではなく、一方的な『狩り』。

私が無力な『獲物』である事を、まざまざと思い知らされました。

殺意と相対するなんて何て思い上がり。

私がどんなに足掻こうと、有無を言わさず食い散らかされる。

私の目の前に潜んでいるのは、そういう存在でした。

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