翼をください
お祈りが終わって目を開いてからも、私はじっと古びた神社を見ていた。
「柚、大丈夫?」
ただじっと一点だけを見ていた私を心配した翼が、声をかけてきた。
「うん、大丈夫」
そう言って、初めて自分から手を繋いだ。
まるで、離さない、離れない、というように。
それから神社の後ろに立っている大きな木を見に行った。
「おおきい……」
風でゆらゆらと揺れている枝。
葉の間から太陽の光がちらちらっと見える。
「どこにも行っちゃいや……」
無意識に発していた言葉に、私は口を押さえた。