翼をください
「柚は読んだ?」
「ううん、翼がお母さんに貸してることさえ知らなかった」
そう言うと、翼は、
「違うよ。昔、柚の家に忘れていったんだ。それをおばさんがとっておいてくれたんだ」
昔……?
確かに少しだけ黄ばんでる感じもするけど、新しく見える。
それは本当に大切にしていた証拠だろう。
「どんなお話?」
そんなその本の内容が気になって、私は翼に聞いた。
好きな人のその優しい表情に、大切にしている物。
それはどんな物なのかが気になった。