翼をください
「ないけど……何で?」
「涙の跡……」
少し俯いて言うと、
「ああ、幸せ過ぎて怖いなって」
と、笑って言った。
幸せ過ぎて怖い……?
それは私もだよ。
「私も……けど、幸せな思い出は増えるだけだからね。これからたくさん作っていこうね」
幸せの数は、減ったりしない。
増えるだけ。
ただ、その幸せを知ってしまったから、欲張りになっちゃうのかな。
「そうだな。思い出……たくさん作ろうな」
そう言う翼に、私は微笑んで、うん、と答えた。
大好きな人の腕の中の温もりを感じながら、幸せに浸っていた。