翼をください
ゆっくり振り向く、大好きな人。
「柚……?」
大好きな人の声。
「なーにサボってるの?」
そう言って近づいた私に、翼は苦笑して言った。
「人が多すぎて疲れた」
確かに途中翼は他校の女子に囲まれてたけど……
「ダンスパーティー……翼と出たかったのに」
そう私が呟くと、翼は私の前まで来て、私の手をとった。
「ここまで音楽が聞こえるね」
大音量で流れているダンスミュージックは、ここで聞くと、静かにほどよく聞こえる。
「柚姫様、俺と踊ってください」
まるで絵本に出てくる王子様のように私の手の甲にキスをし、そう言う翼は、私だけの本物の王子様。
「はい……」
誰もいない取って置きのダンス会場で、私たちは見つめ合い踊った。