翼をください




その時、苦しそうにしながらも、翼が私の手を、握ってくれた。




私はハッとして翼を見た。




「つば……さ……」




遠くから救急車のサイレンの音が聞こえた。




「ゆず……ごめ……ん……」




私は首を横に振る。




だんだん近づいてくる救急車のサイレンの音。




ふと、さっきまで聞こえた翼の苦しそうな呼吸の音が聞こえなくなった。





「え……?つ……ばさ……?」





そして、私の手を握る翼の手が、地面に落ちた。




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