翼をください
「私のこと、想ってくれてたのに……」
溢れた涙を、翼が拭ってくれた。
「柚たちに会って最期に良い思い出作りたいって思ってた。けど、会ったら生きたいって……」
涙の跡を風が乾かす。
「柚を好きになって付き合えて、嬉しいのに苦しかった。生きることができなくなったらどうしようって……」
今はその心配はないんだけどね、と笑う翼。
「柚の幸せが、俺の幸せなんだと心から思った。ずっと会いたかったけど、完全に治って、格好良くなってから会いたかったんだ」
そういう翼は、すごく充実した笑顔だった。