翼をください
動くことさえ忘れてしまった私を現実に戻したのは、翼の温かい手だった。
ギュッと入った少しの力。
私はパッと翼を見た。
翼はじっと前にある木を見ていて……
「きゃっ……!」
いきなり強い風が吹いて、ビックリして思わず声をあげてしまった。
「大丈夫?」
そう言った翼に、なぜか安心感を覚えた。
風はすっかり穏やかな涼しく、心地よく感じる風に変わっていて、
頭上に蒼く広がる空が私たちだけを見ている気がした。