青い傘
青い傘
「朋絵(ともえ)ちゃん。この傘、一本500円だったのよ。いい色でしょう」
 母が買ってきたのは、シンプルな青い傘。深い色合いは、夏の海を連想させる。
 うん、こういう感じは嫌いじゃない。

 柄が太くて、全体的にずんぐりしているけれど、そのほうがいい。
 重心が下にあると、持った時に安定するのだ。
 それに、女の子らしくない色とデザインのほうが、傘立てから探しやすいかなと思った。

 傘を手にした私の、正直な感想だ。
 母に対しても「ありがとう」の言葉以外浮かばなかった。


 次の日も雨。私は新しい傘を広げ、足取りも軽く登校した。
「えー、傘くらい自分で選ぼうよ。その上500円って、適当すぎるー」
 昇降口でばったり会った友達に指摘された。
 去年同じクラスだった子で、結構仲が良かった。

「もしかして、お兄さんの傘?」
 って訊かれたから、普通に、ありのままを答えただけ。
 でも、彼女の呆れた様子に怯んで、
「やっぱりそうだよねー」
 なんて、本音をごまかしてしまった。

 そんなこと、全然気にしなかったのに。
 彼女の傘はピンクで、小花のプリントとレースの縁取りが可愛らしい。
 柄もほっそりとしている。

 彼女はクラスの子と連れ立って教室に向かった。
 私は見送ると、閉じた傘をぐるぐるに巻いてホックを留め、傘立ての端にそっと立てた。
 思ったとおり、赤やピンクに囲まれた青い傘はとても目立つ。
 ここは全校合わせて700名の生徒が通う、女子高なのだ。

(寒色系の傘もあるけど、ほとんどパステルカラーだもんね)

 親が選んだことも、500円だってことも別に問題ない。
 色もデザインも気に入ってる。

 でも、17歳の女子としては、どうなんだろう。
 私はちょっと規格外なのかな……と、考えてしまった。
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